オール電化
脱炭素社会に向けてオール電化住宅が増えています。一方で「住宅をオール電化に切り替えたら光熱費が高くなった」「節電対策をしてもなかなか電気代が下がらない」といった声も聞かれます。そこで、本記事ではオール電化住宅の電気代とその節約術について紹介したいと思います。
オール電化とは家庭内で消費するすべてのエネルギーを電気でまかなうことです。
ちなみに、家庭のエネルギー源の割合を見ると、最も大きいのが電気、次いで都市ガス、灯油となっています。この要因の一つはオール電化住宅の普及でしょう。
オール電化住宅はガスを使わないので、調理器具や暖房器具、給湯機などに特徴があります。例えば、IHクッキングヒーター、セントラルヒーティング、エコキュートなどが使用されます。
続いて、オール電化のメリットとデメリットも把握しておきましょう。
オール電化住宅が消費するエネルギーは電気のみです。そのため光熱費の管理がしやすいという利点があります。また光熱費を節約する場合は、方法が絞られるので「集中しやすい」「効果が分かりやすい」といったメリットもあります。
オール電化住宅は、ガスや火を使用する住宅と比べると、災害時の安全性が高いでしょう。また太陽光発電や蓄電池を設置していれば、災害で停電が起きてしまった場合でも、普段通りに料理ができたり、お風呂に入れたりと生活に困りません。
オール電化住宅の場合、停電が起きてしまうと調理や給湯にも支障が出ます。その点、ガスと電気を併用している住宅はリスクを分散できていると言えるでしょう。ただ、電気はガスよりも災害時の復旧が早い傾向にあります。
オール電化住宅は、一般住宅と比べて、電気代が嵩みます。例えば電気給湯機一つとっても、毎日電気代が発生します。「オール電化に切り替えたら、昼間の電気代が予想以上に高かった」というケースも少なくありません。
では、オール電化に切り替えると、月々の電気代はいくらになるのでしょうか。
以下で詳しく見ていきましょう。
ある電力会社の統計によると、オール電化住宅における一月の電気代の平均額は以下の通りです。
居住人数 | 電気代 |
---|---|
1⼈ | 11,222円 |
2⼈ | 14,049円 |
3⼈ | 15,588円 |
4⼈以上 | 17,416円 |
住居形態 | 電気代 |
---|---|
⼀⼾建て | 16,101円 |
集合住宅 | 12,671円 |
なお、上記の電気代に燃料費調整額は含まれていません。
実は毎月の電気料金には、化石燃料の価格に応じて算定された燃料費調整額が組み込まれています。
燃料費調整額は、化石燃料の価格が上がると電気料金も上がり、化石燃料の価格が下がると電気料金も下がるように設定されています。
この仕組みは、日本の電力会社が海外の化石燃料の価格変動によって大きな影響を受けないように設けられているのです。
ちなみに、2022年5月分の燃料費調整額は以下のように設定されました。
地方 | 燃料費調整単価 |
---|---|
北海道 | 1.56円/kWh |
東北 | 3.36円/kWh |
中部 | 1.61円/kWh |
北陸 | 2.67円/kWh |
関東 | 2.74円/kWh |
関西 | 3.27円/kWh |
中国 | 3.90円/kWh |
四国 | 2.78円/kWh |
九州 | 1.72円/kWh |
それでは続いて、オール電化住宅と電気・ガス併用住宅との光熱費を比較してみましょう。
住宅 | 光熱費 |
---|---|
オール電化 | 15,684円 |
電気・ガス併用 | 16,034円 |
オール電化の光熱費については、前述した電力会社のデータをもとに算出。電気・ガス併用の光熱費については、総務省の家計調査報告(令和3年)を参照しました。
なお、居住人数は2人以上を想定しています。
オール電化に切り替えるのであれば、電気料金プランも見直すべきでしょう。
電気料金プランは「単価が一定のタイプ」と「単価が時間によって変わるタイプ」とに分かれています。
オール電化住宅であれば「単価が時間によって変わるタイプ」の方が電気料金を抑えられます。 というのも、単価が安く設定されている時間帯にエコキュートなどの使用電力を集中できるからです。ちなみに、東京電力の料金プランでは、時間帯ごとの単価が以下のように設定されています。
時間帯 | 電力量料金 |
---|---|
午前1時〜午前6時 | 17.78円/kWh |
午前6時〜翌午前1時 | 25.80円/kWh |
では、各地方の電力会社ごとに、オール電化住宅向きの電気料金プランをまとめました。
電力会社 | 料金プラン |
---|---|
北海道電力 |
エネとくスマートプラン eタイム3プラス |
東北電力 | よりそう+シーズン&タイム |
東京電力 | スマートライフS |
関西電力 | はぴeタイムR |
中部電力 | スマートライフプラン |
四国電力 | でんかeプラン |
九州電力 | 電化でナイト・セレクト |
オール電化住宅で電気代を節約するためのポイントは2つ、「ずらす」と「減らす」です。
「ずらす」とは、電気を消費する時間帯をずらすという意味です。オール電化向きの電力プランを選んだ上で、料金が安い夜間電力をうまく活用するのがポイントになります。
「減らす」とは、消費電力を減らすという意味です。これは当然なのですが、具体的に言うと、電子レンジや食器洗い機など消費電力の大きい家電の使用回数を減らすのが効果的でしょう。
さて、オール電化住宅に欠かせない家電と言えば「エコキュート」と「IHクッキングヒーター」が挙げられます。そこで、それぞれの機器についての節約方法を紹介します。
エコキュートの電気代を節約するためのチェックポイントは3つです。
沸き上げは電気代が安い夜間に行いましょう。また、昼間にエコキュートが自動で沸き増しを行わないように「湯切れ防止」機能をオフにしておくのもポイントです。
エコキュートの設定温度は、機種によって異なりますが、大体65~85℃に設定されています。当然、温度が高い方が電気代がかかります。そこで、夏場は温度を下げるなど季節に応じて調節するといいでしょう。
お風呂のお湯が冷めてしまったときは「高速足し湯」を選びましょう。「追い炊き」や「自動保温」を選んでしまうと、冷めたお湯を温めなおすことになり、電気代が嵩んでしまうのです。
IHクッキングヒーターの電気代を節約するためのチェックポイントは2つです。
調理器具は、鍋の選び方がポイントです。熱伝導率が高い鉄製やステレンス製の鍋を選べば、加熱時間を短縮でき電気代も節約できます。また、短時間で十分に加熱できる圧力鍋や無水鍋もおすすめです。ちなみに、鍋底の汚れや水分を取っておくことも加熱時間の短縮につながります。
調理方法は、余熱を利用するのがポイントです。煮込み料理や炒め料理の最後の味付けは、余熱を持った鍋で行うと味が良く染み込み、電気代は節約できるので一石二鳥。また、鍋での加熱時間を短くするため、電子レンジを利用するのもおすすめです。